動けない

小6のときの出来事。
おれが先生という生物を嫌いになった事件。
ただ、あんまはなす気になりません。べらべら喋ると、あんまたいした話じゃないかのように思われてしまうから。
いやなんです。
うざいんです。
いちいち思い出すのが。
それに、いったらかわいそうな人もいるし。
でも伝えたい。
「先生っていい人だ」
って思ってる人に、注意したい。
人間誰だって、いやなやつなんだ。先生は信用できない。って言いたい。
意見のある人は、何なりとお申し付けください。
俺は先生を許せません。
小さい人間です。俺は。
あの日から、魂が動けない。

小5のときに先生をつぶして代えさせた。ようやく地獄から抜けれる。
そう思ってた。
緊張の小6最初の始業式。俺たちのクラスの担任が名前を呼ばれた。
「6年2組の先生は、仮名角張(かくはり)先生です」
良くも悪くもないといった先生だ。
どんぐり先生よりはむかつかないけど、男の先生なのでちょっと暴力的発言も、ままあったが、けじめをちゃんとつけるひとで前の先生よりずっと良かった。クラスは結構いいかんじの雰囲気だった。
しかし、それだけにあの事件は、小学生にはショックだっただろう。実際にショックだった。

事件のとき、俺は「ゆめはま」という横浜市の企画する、体育祭(といっても踊ったりするだけだけど)の実行委員だった。他の学校の実行委員とも連携してやった。
ある日、俺はこの「ゆまはま」があるので帰りの会を他の人より早く帰らさせてもらった。あとから先生も来るはずだったがこない。待ち合わせ場所で、他の学校の先生も何でこないのかあまり良くわからなかったらしいが、俺が聞いたところ、先生は病院に行っているというのだ。多少不思議に思ったものの、あまり気にしなかった。結局その日、先生は来なかった。
次の日、学校に俺が行くと下駄箱の前でみんながそわそわしていた。
「昨日はびっくりしたね」「まさかあんなことが目の前で起こるなんて」
俺はなにがなんだかまったくわからず、友達に聞いてみると、
「えっ!うるお知らないの?そっか昨日早く帰っちゃたんだっけ・・・実はね・・・」
そこで俺はほんとに自分の耳を疑った。
なんでも帰りの会で歌う歌を一人の男子児童が歌わなかったらしい。そこに先生が歌うことを強要し、挙句の果てにはその子のことを突き飛ばして(といっても強く押すぐらいだが)窓の鍵の部分にその子の耳の後ろがあたり、血が出たんだという。昨日待ち合わせ場所にこれなかったのはその子を連れて病院に行ってたからだということがはじめてわかった。
俺が帰ってすぐあとに、事件はおきたんだ。俺以外のすべての児童が、友達の血が滴る瞬間を見てしまった。たしかに、その男子児童にも非はあったかもしれないが、それにしたって突き飛ばすなんてことはしないだろ普通。
その後、先生は受け持ちのクラスの児童に謝った。泣いて謝った。普段弱音を吐くことのなかった先生が、泣いた。ほとんどの児童が泣いた。
俺は泣かなかった。
悔しかった。
腹が立った。
・・・辛かった。
その瞬間、俺は先生のことが大嫌いになった。否、すべての先生が嫌いになった。先生という存在が嫌いになった。
普段、おこられてもなにしても信じてたのに・・・
先生は裏切った。裏切った。
許せない。どんなに謝ったって、なにしたって、許せない。みんなは見てしまったんだ。大人の汚いところを。教育の現場で起きるはずのない、出来事。取り返しがつかない。大人なんてこんなもんか。

その後、何もなかったかのように時間は過ぎて卒業式もおわり、卒業文集を学校に取りに来ることになったとき、先生は、こんな言葉を手紙に残して、学校を去った。

6年2組のみんなへ

中学校入学、おめでとう!!
新しい学校生活が始まるね。友達作り、そして、自分探しに一歩一歩、ゆっくりでいいから歩んでください。
(中略)かっこいい制服姿がみられないのがとっても残念だけど、みんなが成長するのをちょっと遠くからだけど、見ています。
  1年間、しょうもない先生だったけど、みんなのことは忘れません。
  最後にもう一回。1年間、ありがとう!!

俺はおもった。ほんっと、しょうもない先生だったよ。あんたのせいで、俺は先生なんかもう信じられない。信じて裏切られたら死ぬほど辛い。

あのときのメンバーは、みんな自分探しに一歩一歩、ゆっくりだけど歩んでいる。だけど、俺はまだ成長していない。と思う。


小さい人間です。俺は。
あのときから、魂が動けない。 


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